どうしたら英語が話せるようになるのか。英語学習者であればだれでもその答えに興味があるはずです。人によっては子供のとき海外に住み、母語と同じプロセスで自然と英語を身に付けることができた幸運な人もいます。また数年の海外留学でビジネスレベルの英語を身に付けた人もいます。こう書くとみなさんは、英語は海外に住まなければ本当には身に付かないのかと思われるかもしれませんが、日本でコツコツ勉強し一度も海外に出ることなく十分な英語を身に付けた人もいます。逆に、海外に住んでも、日本人コミュニティーにどっぷりつかり、英語を使う機会をできるだけ避け、10年経っても20年経っても英語が話せない人もいます。
言葉を自然と身に付けることができる子供時代を海外で過ごした帰国子女のような特別な場合を除き、ある程度の年齢に達してから英語学習を始め、成功した人達にはひとつの共通点があります。それはそのレベルに達するまで英語学習を辞めなかったということです。当たり前のことかと思うかもしれませんが、「英語が身に付かなかった」と自ら結論を出し、学習を辞めてしまうことが、目標とする英語を身に付けることができない最大の理由です。
人によって目標のレベルに到達するための期間は様々で、当然英語学習を密にやった人はその期間が短く、怠けてしまった人はその期間が長くなります。英語を身に付けるために必要な学習時間のデータには諸説あります。アメリカ国務省が公表しているデータによると「英語のネイティブスピーカーが日常生活で困らない程度の日本語を習得するのにかかる時間は約2,200時間」だそうです。興味深いのは、英語のネイティブスピーカーが言語的に似ているスペイン語を学ぶ場合にはこれが600時間で済むそうです。日本人が日常会話程度の英語を身に付けるためには3,000時間程度の学習が必要であると言われています。毎日2時間勉強しても4年以上かかる計算になります。残念ながら私たちにとって言語として構造のちがう英語を身に付けることはそう易しいことではありません。
それでも英語を身に付けたいと思う人は、往々にして、何とかもっと楽に、早く英語を身に付ける方法はないかと考えるものです。そして新聞チラシやテレビのCMで見た「一日〇分英語を聞くだけで口から英語が飛び出す」とか「○○教授が開発した奇跡の英語学習法」といったものに飛びつきがちです。どんな教材にも学習方法にも良いところはありますので、大切なのは学習者がそれをどう使うかですが、「楽をして英語が身に付く」ことを強調する教材、学習法は、学習者の弱みに付け込む販売戦略のキャッチコピーでほぼ間違いないと私は思っています。
私の好きな言葉に「英語学習はHowではなくHow Much」というのがあります。効果的な学習方法、自分に合った学習方法というのは存在します。ただそれを見つけるだけで英語が上達するはずはなく、実際に英語学習にどれだけ時間を費やしたかの方がはるかに大切です。英語の上達には「量」と「頻度」が物を言います。英語が話せる人は必ずそれなりの努力を続けています。今英語が話せるか、話せないかは過去の自分が決めたこと。将来英語が話せるようになるか、ならないかは今の自分が決めることです。楽して英語が身に付く方法を探すことに時間を使うのはやめて、地道にコツコツ、出来るだけ密に学習を継続することが本当の意味での英語習得の最短で唯一の道なのです。